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88版『ジーザス2』のフライヤーをフォトスタンドに収納してみたよ

今回使用したフライヤー(チラシ)は、PC-8801の末期にエニックスより発売されたAVG『ジーザス2』で、A4版サイズの横向きに両面印刷されています。同作品はのちにPC-98版、X68K版と発売されますが、このフライヤーは初出機であるPC-88版についてのみ書かれています。
ゲーム作品についての紹介は別の機会に行うとして、ここではその販促用のフライヤーの飾り方についてお話しします。

フライヤーの画像化

フライヤーをスキャンして、色合いに注意しながら画像化します。データ化されたフライヤーはパソコンでも観ることができますが、ここでは飾るためにあえて印刷します。
そして離れたところからでも図柄の様子がわかるように、すこし濃く出力しているので、オリジナルとは多少異なる色合いになっています。

フライヤーのインテリア化

フライヤーの原本はA4版と大きいので、2L版にミニチュア化して、フォトスタンドに収めて飾りました。ポスターフレームの場合、壁掛けになってしまうので、この方法をとれば卓上でいつでもお気に入りのフライヤーを近くに置いておくことができます。

JESUS2_Stand

(おまけ)強烈な折り目が残念

当時パソコンショップの設置スペースの都合なのか、フライヤーはきれいに半分に折ってありました。そのため中央に筋がついていて痛々しいかんじです。

JESUS2_01

JESUS2_02

ウラ面の仕様の記載からPC-88版向けの案内であることがわかります。2D、6枚組、V2モード、2ドライブ、サウンドボードIIなど、どれも88らしい用語が並んでいます。

 (おまけ)『ジーザス2』 パッケージとゲームディスク

デジタル8色で描き込まれたグラフィックや、PCM音源を使ったサウンドボードIIの楽曲など、88の機能を存分に使用した演出が魅力のAVGです。
1991年3月24日発売でした。

いつかこの作品について紹介したいと考えています。

JESUS2_Package

FC版『ポートピア連続殺人事件』のチラシ

FC版『ポートピア』の地下迷路の地図をつくった

きょうはまた『ポートピア』のことを考えていました。
少し試したいことがあって。ゲーム開始直後、フラグのことはお構いなしに真っ先に地下に入って、あの壁の音が違うというイベントが発生するか。それから金庫の中身をみることができるか。それらの疑問を確認しました。結果は、うん、納得です。
こんなかんじで最近、なにかと地下に出入りすることが多くなってきたので、迷子にならないようにマップを作成しました。ゲーム中は数種類のパーツの組み合わせで表現されるプレイヤー視点の通路は、ファミコンの能力もあって位置関係の把握に時間がかかりますが、このマップで何とかなりそうです。
いつか記事にまとめたいと思います。

 

当サイトでは特集ページとして、この『ポートピア連続殺人事件』を紹介していますので、ご覧いただければ幸いです。

またまたFC版『ポートピア』をプレイ

ふと思いついてプレイ。
以前は1時間もあれば普通にクリアできたのですが、少し期間が空いてしまうとフラグを立てるポイントを忘れていて‥‥なかなか進めず、ぐるぐると‥‥。
クリアしたAVGでは定番のハマり—過去にクリアしていることで、先々の展開を知っているのに、逆にそれが邪魔をしてフラグが立っていないなど‥‥。

で、やっとクリアしました。
クリアといっても終わらせることが今回の直接の目的ではなくて、シンプルな構成な作品ので、どんなことがトリガーとなってフラグが立つのか、など少しずつ試しながら進めていきました。運よく(?)、自分がうまく引っかかって勉強になりました。AVG愛です。

(資料)以前に使用していたバナーです。

色遣いがベタで古い‥‥。

『ポートピア』タイトル

 

当サイトでは特集ページとして、この『ポートピア連続殺人事件』を紹介していますので、ご覧いただければ幸いです。

特集『スナッチャー』

※これは投稿から数年が経過している古い記事です。当時の様子を残すためにそのまま掲載しています。

いつもご覧いただきありがとうございます。
今後 本作品に関わる攻略や研究結果を公開できたらなと考えています。

1991年、モスクワで開発中の細菌兵器が漏れ、東欧やユーラシア大陸の80%が壊滅、世界人口の約半分が死滅した。
そして、50年後。
舞台は2042年12月、瀬戸内海に浮かぶ人工島—ネオ・コウベ・シティ。
謎のバイオロイドが出現し、人を殺害。密かに本人とすり替わることからスナッチャーと呼ばれた。
対スナッチャー用特殊警察—JUNKERに配属されることになった主人公ギリアンは、3年前に妻のジェミーと共にシベリアで発見され、過去の記憶をすべて失っている。
そんなミステリアスな状況でスタートする作品。

※本稿は主にPC-88版を中心に書かせていただいています。

 PC-88版『スナッチャー』—シリーズの元祖

『スナッチャー』は1988年にパソコンの名機、PC-8801mkIISR以降の対応作品として登場しました。

パッケージ

PC-88版『スナッチャー』
PC-88版『スナッチャー』の製品パッケージ。 発売当時に購入したので やや傷んでしまっていますが、いまでも大切にしています。

PC-88版『スナッチャー』
パッケージの裏面。スナッチャーの恐怖をあおる文章が並んでいますが、実際には もっと深いところに作品の神髄があります。
ネオ・コウベ・シティの夜景の中央は、JUNKER本部があるコナミ・オムニビル。

製品仕様

発売日1988年11月26日
メーカーコナミ株式会社
価 格8,800円
対応機種PC-8801mkII SR / TR / MR / FR
PC-8801 FH /MH / FA / MA
PC-88 VA / VA2 / VA3
メディア5"2D (5枚組)
※5インチ フロッピーディスク
サウンドFM音源ステレオ対応
サウンドボードII対応
備考
※パッケージ裏面より
BGM 40曲
効果音 81音
画面数 200
シナリオ原稿用紙 900枚

ここでは『スナッチャー』を語るうえで、ポイントとなる要素を技術的な側面から紹介していきます。

無駄のない洗練された設定

ギリアンと相棒の役割

捜査はプレイヤーであるギリアンが、案内役のメタルギアmkIIを連れて行動することになる。このメタルギアは攻撃できるような武器の装備はなく、ゲームの途中経過の記録やビデオフォンとして使用するなどの いくつかのツールとしての役割が与えられている。状況分析などは、そのようなコマンドが用意されているわけではなく、物語の進行のなかでメタルギアの判断で行われる。メタルギアはサポートするギリアンの性格や行動パターンなどを考慮してプログラムされており、最適なコミュニケーションがとれるはずのロボットであるが、どこかふたり(?)のやりとりは皮肉まじり。そんな関係ではあるが捜査の状況を的確に整理をして提示してくれ、単に事務的にヒントを与えるだけの役割になっていないことに好感がもてる。

そしてプレイヤーである主人公ギリアンは記憶喪失であるという点も見逃せない。
この手法はゲーム的にいえば、プレイヤーが知らないことはギリアンも知らないという状況をつくりだし、プレイヤーとの間の知識や価値観の差を埋め、一体感をつくりだす。その仲介役にナビゲーターであるメタルギアが補足をする。そしてシベリア中立領土で妻のジェミーと共に発見されたことや、記憶の中に かすかに残るスナッチャーという言葉の存在も、安易に記憶喪失に頼らない深い考えがあっての設定といえる。

不気味さの象徴としてのスナッチャー

彼らは冬になると出現し、ヒトとすり替わる。対象となる人物の身長の差異は、成人の大人の範囲であれば伸縮でき本人と同じ背格好になれる。ただ子供や老人は範囲外となるためスナッチできない。そしてスナッチャーは人工皮膚をまとい汗や血を流すことができ、オリジナルの人間と区別できない。そんなところまで設定されている。
そしてプロローグでも語られるように、国籍、目的、正体不明。某国の新兵器か、宇宙からの侵略者か、というフレーズも現実味がある。そんな正体がわからないスナッチャーの存在からくる不信感などが非常にうまく表現されている。目の前にいる人物がスナッチャー かもしれない。しかし調べようにも人権保護の観点からJUNKERであってもスキャニング令状が必要になるなどの細かな設定が活きてくる。

システムの特徴

本作は一般的なコマンド選択式のAVGではありますが、PC-88のキーボードのテンキーがそのままコマンドに割り当てられている番号に対応しているた め、とても操作がしやすい。キーボードは単にコマンドの選択デバイスだけにとどまらず、物語の進行上 必要なシーンで使用されることになり、この作品がもつ懐の大きさに感心。
推理が必要となるシーンやスピード感があるシーンなどがうまく散りばめられていて、またAVGであ りながら反射神経が必要とされる銃撃戦やパズル的なミニゲームをこなすシーンもあり、飽きさせない工夫がなされている。
またフラグ立ての手順についても、ユーザーに分かりやすくそれとなく示され、何をすべきかを意識させる配慮も感じられる。プレイ中に このようなたくさんの手法が取り入れられ成立している作品だと気づかされる。

射撃シーン~キーボードと絶妙な相性

ゲーム進行中に発生する、スナッチャーやその警戒用ロボットであるインセクターと行うことになる銃撃戦も本作のアクセントとなっている。応戦するには まず「ブラスターを構える」という操作が必要となるが、これは[SHIFT]キーを押すことでその動作を表現している。
ブラスターを構えると画面が3×3の9マスに分割され、どのマスに発射するかをテンキーで指定するというシステムを採用している。これはパソコン版ならで はの仕様といえる。いわばモグラ叩きのゲームのように、その対応している9マスのいずれか指定することになり、少しずらして撃つといった概念はない。
ブラスターの使用に[SHIFT]キーを押さなければならないことや、3ライフ制のダメージカウント、そしてゲームオーバーの概念もあって緊張感を与えてくれる。

PC-88キーボード
自己所有のキーボード。まだまだ現役。

サウンドボードIIへの対応

本作品はサウンドボードIIの対応により、ステレオサウンドで楽しむことができる。この対応のより通常は、FM音源6音、PSG音源3音、リズム音源6音、PCM音源1音に拡張されるが、あえてリズムやPCMの機能は使用せず、波形メモリ音源のみで楽曲を勝負しているあたりが、サウンドにこだわるコナミらしい選択といえる。音色はコナミのMSX製品でよく活用されていた拡張音源であるSSCの、特徴的な”あの”スネアドラムをPC-88で再現しているようなサウンド。
BGMとして使用するだけでなく、効果音とその強弱による演出、近未来的なピコピコした音や、水が流れる音などにも活用され、音の演出にも余念がない。さらには”音を鳴らさない”シーンをあえてつくることで緊張感を演出している点も見逃せない。

マニュアル

PC-88版『スナッチャー』 ユーザーズマニュアル。(MSX2版と兼用)
操作方法の説明の他、下描きや絵コンテ、企画コンテ、そして『スナッチャーワールド』の設定資料集が収録されている。またこの作品の世界情勢や交通、社会現象、環境問題、産業など、そしてスナッチャーがかかわる事件の年表やJUNKERの規程、プロローグを描いたコミックまでもが掲載されていてゲームプレイ以外の手法でも物語を紡いでいる。
すべての情報がゲームの進行に必要ではないが、作中で触れられない情報の補完として活用すると理解が深まる。

PC88版『スナッチャー』マニュアル
操作説明の他、設定集なども兼ねている。

関連商品

サントラ『スナッチャー』

CD_SNATCHER_1
本製品はCD版の他に、カセットテープ版がある。

オリジナルであるPC-88版のサウンドボードII音源によるアルバム。
サウンドに乗せて外国人声優によるミニドラマが展開される。PC-88の制約から実現できなかったが、開発陣は当初から声優に演技をさせたかったのかもしれない。英語のセリフが入ることによって賑やかに聞こえるかもしれないが、要所ごとに挿入されることで物語のイメージが補完できる。添付のライナーノーツには開発スタッフのトークがまとめられているが、’80~’90年代の軽いノリが気になるところ。
他に本アルバムで使用しているセリフの台本(日本語訳あり)や譜面の掲載あり。そして最終ページには、PC-88版には存在しないシーンの絵コンテが数点 掲載されており、当初から『スナッチャー』の完成形が予定されていたことがうかがえる。約4年後に発売されるPCエンジン版で初めてこのシーンを体験することになるのだが、それでも一部が絵コンテとは異なっており、何か別の展開が用意されていたと推測できる。
いずれにしても当時はPC-88版が物語のすべてであると思っていたとき。資料などから読み取れる情報から、スナッチャー作品の奥深さが感じられた。

書籍『チャレンジ!A.V.G & R.P.G V』

Book_AVGRPG
オリジナル版と復刻版の2種。この巻頭コーナーで『スナッチャー』が取り上げられている。

ゲーム評論家である山下章氏 著の人気ゲーム攻略本の最終号。
特徴は従来の攻略記事ではなく、ご本人のこだわりで『スナッチャー』の物語を小説風に書き起こしている点。個人的には攻略記事の方が整理しやすいと感じているため、大量の文章に圧倒される。当時に購入した時からずっと抱いている感想。

PC-88版の最大の敵—未完の物語

『スナッチャー』シリーズ初の作品でありながら、すでにAVGとして完成されていたため、その後も何度もクリアした作品だが残念な点も。
配色についてコマンド一覧は黄色、一般的なセリフは白、その他 水色、赤などたくさんの色を使用しているため、テキストの表示エリアはカラフルなのが気になるところ。またアクセスが多く、ひとつのコマンドを実行するたびにメッセージをディスクから読み取るため、様々なことを試しながら進むAVGとしては、システムまわりの改善を希望したい。

そして最大の不満は、PC-88版は容量の都合で肝心な物語が完結していない点。当時は物語自体が「完結しない あやふやな状態で終わる」という認識で、決して物語に続きがあるとは思えない印象で、ユーザーにとってはとてもストレスが残る作品だった。

しかし‥‥。

約4年後にPCエンジン版『スナッチャー』が登場することで、それまでの消化不良だった物語が一気に進展することになる。

PCエンジン版『スナッチャー』の登場を補完する貴重な販促アイテム。

シングルCD『スナッチャー●サウンドクリップ』

PCエンジン版『スナッチャー』の発売前に、ゲーム雑誌『PC Engine FAN』の企画で応募者全員に配布された非売品。

(トラック1)PCエンジン版『スナッチャー』のゲーム本編で実際に使用されているオープニング曲「One Night in NEO KOBE CITY」が丸ごと収録されている。
(トラック2)ゲーム本編と同じ「BIO HAZARD」に乗せ、ギリアンがスナッチャーの脅威について語るが、後半ではゲーム本編とはまったく異なるセリフが続く。まだ用語が定まっていない時期だったのかルシファーαの事故を”大魔王の大参事”と呼称している。ゲーム本編では単に”大参事”という。)
ユーザーの手に渡るものとしては、ここで使用されている2曲は、おそらく これが初の公開となる。
(トラック3,4,5)ショートストーリーとなり、スナッチャーの追跡やジェミーとのやりとりなどがギリアン視点で描かれているが、全体的にセリフが臭く 浅めの展開。メタルギアが機械的な口調であったり、ジェミーの声優が異なっていたりと その違いも楽しい。使用曲はPC-88音源による曲(THEME OF KATHARINE , PREASUR OF TENSION , THEME OF ENDING)や『SDスナッチャー』の曲(THE PEACEFUL AVENUE)も使われており豪華なつくり。
(トラック6)ゲーム本編で使用されている重要なセリフをつなぎ合わせたトレーラー音声になっている。ジェミーはゲーム本編の声優(井上喜久子氏)。

『スナッチャー●サウンドクリップ』

 

特集『クロス探偵物語』

※これは投稿から数年が経過している古い記事です。当時の様子を残すためにそのまま掲載しています。

いつもご覧いただきありがとうございます。
今後 本作品に関わる攻略や研究結果を公開できたらなと考えています。

(上)プレイステーション版 (下)サターン版
(上)プレイステーション版
(下)サターン版

オムニバス形式で構成されているのが特徴的なAVG。各登場人物の性格がきちんと設定されており、会話のやりとりがおもしろい。クリア予想時間も説明書に記されており、短編ドラマに参加するような感覚でプレイできる。
本作品は、’98年6月にサターン版、’99年10月にPS版が2枚組で発売された。
本作品はオリジナルのサターン版を経て、PS版で一度発売されたものを更に前後編2つに分けた再販版で各1,500円。安いが内容はかなり充実している。
ちなみに、サターン版との大きな違いは、文字のみだった主人公のセリフがPS版では音声に。そしてサターン版には「もつれた7つのラビリンス」とサブタイトルがついていた。
※本稿は主にプレイステーションの廉価版を中心に書かせていただいています。

作品概要

特筆すべき点は、データの読み込みスピード。このジャンルの作品というのは「移動」コマンドなどにより、グラフィックを描き換えることが頻繁に行われる。そこで”マッハシーク”と謳われたエンジンでグラフィック等を読み込む時間を大幅に短縮している。ただグラフィックデータを軽くする関係上、画面を粗くし、アニメも部分的な箇所だけが動くという、少々古い手法をとる結果となっているが、ゲームシステムの弱点を解消したことの価値は大きい。
この作品の構成を分析してみると、プレイヤーが主人公となり、手を動かし、調査を進めていく参加型シーンと、主人公がプレイヤーとは別の第三者となり、トリックや事の流れを説明してくれるシーンとに分かれていることに気がつく。つまりは、ある程度、プレイヤーが調査したあとに、主人公が集めた情報をまとめてくれるため、物語をわかりやすく、スムーズに進めることに成功している。ときどき、主人公が勝手に考え、プレイヤーの意思とは異なる行動を起こすことがあるが、これはこれで主人公のキャラを知れて楽しいつくりになっている。余談だが、主人公が発する言葉は軽く、直接的にものを言うシーンが物語の随所で見られ、いままでにないキャラ設定に心が動いた。
また通常、同ジャンルの他の作品であれば、物語のリアルさをだすためにゲーム内の時間の流れを実時間に近づけて描くことがほとんどであったが、この作品は違う。物語内の時間の流れがとにかく早く、テンポのよい展開をつくりだしている。

システム面と物語の両面から、快適なゲームがプレイできるようにと、配慮がなされている印象を受けた。また物語を進行させるためのフォローもしっかりされており、推理をする楽しさを与えてくれ、最後まで作品を体験して欲しいという制作者の心づかいをも感じた。

物語は、オムニバス形式ということで、それぞれの話は完結している。しかし、オープニングから語られている主人公-黒須の父親の死や、その他の人物との関係が消化されないままになっている部分もある。これらの伏線は、当時からアナウンスされている『クロス探偵物語2』へ持ち越される計画であったのだろうと推測できる。

PS廉価版-前編

PS版廉価版前編パッケージ
PS版廉価版前編パッケージ

オ ムニバスという方法を採用していながら、1本1本の話にボリュームがあり、推理AVGファンの心をつかむ絶妙な手法を用意してプレイヤーを楽しませてくれ る。クリア予想時間も説明書に記されており、短編ドラマに参加するような感覚でプレイできる。前編ではゲームの仕組みや世界観の様子を中心に丁寧に散りば めてあり、徐々に魅力が理解できるようなつくりになっており、物語が進むにつれ、よりAVGらしいリズムになる。

物語の見せ方も優秀で、進行を止めないような工夫がなされている。

PS版廉価版前編パッケージ(裏)
PS版廉価版前編パッケージ(裏)

聞 き込みや証拠品探しなどのように、手を動かし、プレイヤー自身が調査を進めていく参加型シーンと、主人公がそれまでの状況を一方的に整理し、物語を進める ための方針を示してくれるシーンとがあり、複雑になりがちなAVGの情報を最適な方法でまとめ、プレイヤーに推理させる楽しさを影で支えてくれる気配りが 嬉しい。また、グラフィックも怪しい箇所を調べたくなるような描き方がされていて、AVG心をくすぐる。
AVGというゲームシステムの制約の中であの手この手で、物語に参加させることを考えてあり、やはりこれはAVGというスタイルでのみ体験できることだと感じた。

このタイプのゲームは「犯人探し」という目的だけに関心が向かいがちだが、主人公が探偵になった経緯から、物語を通して成長していく様子が描かれているため、「犯人は誰か」という点以外でも鑑賞すべき箇所が多い。

物語も優秀だが、CD-ROMのアクセスを極力減らす努力がなされており、様々な箇所で親切な設計がなされている作品。
【資料】
■オープニングは、ピチカート・ファイヴの『大都会交響楽』を使用。
■PS廉価版の前編での主な追加事項(PSのオリジナルからの変更点)
・前編のエンディング
・後編の紹介映像

PS廉価版-後編

PS版廉価版後編パッケージ
PS版廉価版後編パッケージ

後編では、様々なトリックが登場し、また殺人現場が豪快に描かれていたりと、盛り上がりを見せる。前編からの伏線がつながり、物語の後半としてうまくまとめられている。

後 編の特色としては、閉鎖された空間で事件が起こり、行動が限定されているシーンが多い。犯人が自分たちと同じ空間にいるかもしれないということを人物の不 安な表情を使ってうまく表している。またこの作品は登場人物の性格付けが丁寧に設定されていて、ひとりひとりが目的を持って、意味のある存在で登場してい ることに気づく。前編に登場した人物が再度、後編に登場したときに、親しみを感じることができたのは、こういった部分がしっかり設定されているからだろ う。
残酷な殺人事件が起こる状況下で、顔見知りの人間に会えるということはゲームとはいえ、心強い。

PS版廉価版後編パッケージ(裏)
PS版廉価版後編パッケージ(裏)

前後編をとおして、共通して気になる箇所を2点をあえて挙げれば、次のようになる。
ひとつめは、物語の進行(フラグ立て)とは関係のない人物に話しかけるとそっけない返事が返ってくること。AVGのカラクリからすると、これもひとつのヒントを与える方法で「物語の進行には無関係な人物」と判断できるが、もう少しメッセージの工夫がほしかった。
またもう1点は、高速な読み込みスピードの実現のために、画像をやや粗くしている点。それ自体は圧縮率を上げ、読み込みスピードが向上するという利点があ るが、結果として、グラフィックが粗く見え、古臭い印象を受けてしまうことがしばしばあった。しかし、「画像が粗い」とは言うものの、決して「汚い」とい う意味ではなく、グラフィッカーの個性とも解釈できる。
予断であるが、例えば、部屋の壁を見ても、シミなどで汚れておらず、非常にきれいに描かれていたり、殺風景な場面を見ると特にそんな圧縮率を高めるような努力が伺えた。

続編がアナウンスされて、ずいぶんと経つが、このままのスタイルで制作されれば、かなり良いものが完成するハズ。
クロスと神宮寺‥‥。
個性を二分化しながら、末永くがんばっていってもらいたいものです。*1)
*1) 下の「mini MEMO」というコーナーで説明しています。
【資料】
■PS廉価版の後編での主な追加事項(PSのオリジナルからの変更点)
・前編のダイジェストムービー
・「クロス探偵物語2」の予告映像
■後編には、セーブデータを利用したおまけ特典がある。(説明書に記載)

PS廉価版-収録タイトル一覧

■前編に収録 ★後編に収録

タイトル 平均終了時間
■第一話 名探偵誕生 約2時間
■第二話 疑惑 約5時間
■第三話 ゆがんだ名門校 約7時間
■第四話 依頼者 約1時間
★第五話 紺碧の記憶 約8時間
★第六話 満月の夜に 約3時間
★第七話 タランチュラ 約10時間

クリアにかかる所要時間を示した「平均終了時間」が一応 説明書には示されているが、これは実時間ではなく、あくまでも物語のサイズ(規模)と捉えた方がよい。
推理AVGのツボをついたタイトルは、その名に恥じぬよう、十分な奥の深いドラマを用意してくれている。
すべての物語は個性があり甲乙をつけがたいが、個人的にはAVGの仕組みをよく研究されている『ゆがんだ名門校』、『タランチュラ』がオススメ。

『クロス探偵物語』は、AVGの代表格として、十分に説得力のある作品です。未プレイの方は、ぜひ、手にとって遊んでみてください。きっと、いままでのAVGとは、ひと味もふた味も違う風味を味わうことができるはずです。

関連CD

ピチカート・ファイヴ
『大都会交響楽』

PIZZICATO_FIVE[single]『クロス探偵物語』は主題歌にピチカート・ファイヴの『大都会交響楽』を使用。
このシングルCDは直接の『クロス探偵物語』の関連製品としては扱われていないため、CDのパッケージにもその記載はない。ピチカート・ファイヴの楽曲提 供、というイメージが強い。なお、『PIZZICATO FIVE JPN』というアルバムにも、同「大都会交響楽」が収録されているが、ボイスとかぶってしまっているため、ゲームと同じ状態で聴くには、やはりこのシング ルCDの方がオススメ。『クロス探偵物語』自体のサントラはリリースされていないので貴重!!

収録曲

1.大都会交響楽
2.コンチェルト
3.大都会交響楽
4.コンチェルト
※3,4は、インストルメンタル

セガサターンヒストリー VOCAL コレクション
『セガサターン発売10周年記念盤』

先に紹介した、クロスの主題歌『大都会交響楽』がこのアルバムに収録されているので、当時、購入できなかった方は いかがですか。

アルバム紹介

セガサターンヒストリーシリーズ、セガサターン発売10周年記念限定盤をリリース。ファン投票やリクエストで、選ばれたヴォーカルコレクション。他に、サウンドノベルの『街』や『セガサターン、シロ!』などのボーカル曲が収録されている。

関連書籍

以下のいずれも、オリジナルであるサターン版、同オリジナル プレイステーション版向けの関連書籍となります。

クロス探偵物語~もつれた7つのラビリンス~ 公式ガイドブック

サターン版◇1,000円◇NTT出版◇’98.6発売

攻略本(サターン版)
攻略本(サターン版)

攻 略ページでは、推理のポイントが記されているのみで、AVGというジャンルへの配慮がなされています。一方、後半の完全解決編では、最短ルートや詳細な見 取り図が示されているので、より深く本作品の世界を知るのに役立ちます。巻末には、数ページですが、開発陣のインタビューつき。
後半は白黒ページ。

収録内容

◆登場人物編◆探偵入門編◆全話攻略◆完全解決編◆開発スタッフが語る「クロス」

クロス探偵物語 公式ガイド

プレイステーション版◇1,200円◇ソフトバンク パブリッシング◇’99.10発売

攻略本(プレイステーション版)
攻略本(プレイステーション版)

後発だけあって、人物相関図、登場人物名鑑、物語のダイジェスト、犯行現場の間取り、ゲームの中の名珍場面集、開発陣インタビューなど、多彩な企画が盛り込まれていると感じます。
調査報告(攻略)ページには、攻略記事とコマンドの最短ルートが同じ場所に掲載されているので、NTT出版のサターン版のような配慮が必要だったのではないでしょか。
巻末には「週刊 ザ・プレイステーション」に掲載されたサイドストーリーがあり、ファンには嬉しい特典。全ページがカラー仕上げ。

収録内容

◆システム◆登場人物紹介◆全話攻略◆調査報告◆事件関係資料◆インタビュー&設定資料◆週刊ザ・プレイステーション記事再収録◆エンディング

クロス’Sメモ

この『クロス探偵物語』は、いくつかの不運がありました。

発売前の仕様変更

サターン版パッケージ
サターン版パッケージ

初作品サターン版では、いちど発売延期がありました。
それはメーカーの「徹底的に作品をつくり込みたかった」という理由と、もうひとつ。2枚組の作品の1枚目をプレイした分岐結果で、4種類ある2枚目の内容 が決定され、それをメーカーが直接ユーザーに郵送する、”I-VACS”という方法が原因していました。つまりは購入時は1枚しか手元にないということで す。
プレイヤーに合わせた最適な物語がプレイヤー次第で決定されるという方法でしたが、すべてを体験したい、家族などの複数でプレイする場合などに支障を来すものとなったため、発売前に考え直した、というわけです。
このあたりの事情の説明は、ゲーム雑誌『ファミ通』で告知文が掲載されていました。

サターン版パッケージ(裏)
サターン版パッケージ(裏)

最 終的には4種類をすべてを2枚のメディアの中に入れることに成功し、発売されたという経緯があります。これがどのように改善されているのか、というところ に感心をもちました。これはプレイするとわかりますが、説明書やご自身で確認してみてください。「4種類」がキーワードです。

開発元は無名のメーカー

ARK自身はメーカーにかかわらず、優秀と思える作品はなんでも手にとってしまうのですが、『クロス探偵物語』はなかなか目にする機会がありませんでした。
当時、サターン版の『クロス探偵物語』の発売告知を見たときは、「デジタル・トウキョー」というゲームファンにはまったくの無名の会社でした。(後にコンシューマ事業が分化して、1998年ワークジャムの設立となりました。)
この作品は雑誌の露出度も低く、なかなかゲームの魅力や正体をつかむことが困難でした。シリーズモノではなく、しかも会社名もなじみがない、ゲームタイト ルも初めて目にする‥‥そんなイメージだけで、本作品を見ていました。周囲の評価に振り回されず、面白いソフトは自力で発見し、自分自身で評価をしたいと いうスタンスで眺めても、購入には至りませんでした。時を経て、2000年9月28日、この作品の廉価版の発売日にようやく購入することになりました。

サターン版には、AVGファンをそそる仕組みも

オリジナル作品のサターン版には、後発の作品にはないモードがありました。
通常、AVGといえば行動をとるときにコマンドを選択するが、サターン版では、そのコマンド選択の回数がゲーム中、内部でカウントされている。ゲームの進行にはまったく関係がないが、クリア後に何ステップでクリアしたかが、わかる仕組みになっている。これを利用して、「最少コマンドリーグ」 というキャンペーンが行われ、いちばん少ないステップ数でクリアしたユーザーには、イタリア旅行などが抽選でプレゼントされた。現在、この企画はでは終了 しているが、AVGファンであれば、最短ルートを探す指針として重宝するのでは?(しかし、昨今の丁寧すぎる攻略本では、すべてルートが記されているので した。)サターン版もPS版とあわせて、鑑賞してみては?

サターン版とプレイステーション版、それぞれの良さ

プレイステーション版パッケージ
プレイステーション版パッケージ

グ ラフィックの発色やシーンの切り替わりなどはサターン版が優れており、一方、プレイステーション版は主人公のボイス追加など、より完成された印象を受けま す。このあたりの話は、グラフィック担当の玉置一平さんのサイトで軽く触れられていますので、興味がある方は、覗いてみてください。単なるグラフィックの 提供というだけではなく、『クロス探偵物語』には、細かい映像の作業にも参加したことが確認できます。

会社から会社へ‥‥版権の移管

プレイステーション版パッケージ(裏)
プレイステーション版パッケージ(裏)

デー タイーストは2003年、残念ながら倒産し、同社の名作AVG「神宮寺三郎シリーズ」の版権が、『クロス探偵物語』のワークジャムに移りました。また、神 宮寺の『未完のルポ』、『夢の終わりに』、『灯火が消えぬ間に』のプロデューサーである西山氏もワークジャムに移り、第8作目『Innocent Black』や第9作目『KIND OF BLUE』を手がけ、活躍されています。ある意味、AVG制作の実績があるワークジャムに神宮寺シリーズの版権が渡り、ファンとしては安心しています。
これからのご発展をお祈りしています。

特集『ポートピア連続殺人事件』

※これは投稿から数年が経過している古い記事です。当時の様子を残すためにそのまま掲載しています。

いつもご覧いただきありがとうございます。
今後 本作品に関わる攻略や研究結果を公開できたらなと考えています。

ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』カセット
ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』
すべてはここから始まった。

それまで反射神経が要求されるアクションゲームが、ゲームとして扱われていた時代にファミコン史上初のAVGがパソコンから移植された。
1985年11月29日(金)に登場した、あの『ポートピア連続殺人事件』だ。開発チュンソフト、発売エニックス、そして、原作はご存知、『ドラゴンクエスト』シリーズでお馴染みの堀井雄二氏。
高価なパソコンから移植され、そして初めて触れるAVGという未知なるジャンルに、ファミっ子の胸は高鳴った。
※本稿は主にファミコン版を中心に書かせていただいています。

本作は複数の機種でリリースされました

いまではすっかり『ドラクエ』の世界に行ってしまいましたが、作者は堀井雄二氏です。当時は『ポートピア連続殺人事件』、『オホーツクに消ゆ』、『軽井沢誘拐案内』と個性的なAVG作品を制作されていました。

[発売機種] PC-8801,8001,6601,6001
FM-7シリーズ
X1シリーズ
MSXシリーズ
ファミコン
[価格帯] 3,600円 / 3,800円 / 5,500円 / 5,800円
[媒体種類] テープ / ディスク / ROM

当時のパソコンは各社の独自仕様で、メーカーごとのカラーがよく現れていました。この『ポートピア』も同様に、マシンごとにグラフィックや内容が異なるなどの個性がありました。また現在のようなOSの概念はなかったため、データを使い回しすることも困難で、他機種への移植作業といっても、ほとんどが一から作り直すような時代でした。

ファミコン版のシステムの特徴

ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』の至るまでのシリーズのシステムの遷移は以下のとおりです。

■PC版『ポートピア連続殺人事件』(1983年初出)
コマンド入力

■PC版『オホーツクに消ゆ』(1984年初出)
コマンド選択

■ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』(1985年発売)
PC版『オホーツクに消ゆ』のコマンド選択を継承

PC版はキーボードから直接コマンドを入力しゲームを進める方式が、当時の標準的なスタイルでした。その後、言葉探しの問題点を解消するために考え出されたコマンド選択型のシステムが、PC版『オホーツクに消ゆ』で初めて採用されました。そして最終的にそれがファミコン版『ポートピア連続殺人事件』に持ち込まれ、のちのAVGの標準的な方式として他の作品でも活用されるようになりました。

またファミコン版『ポートピア連続殺人事件』は、のちの1986年に控えている『ドラゴンクエスト』の入門用としての役割もあったとのことです。ユーザーが初のRPG『ドラゴンクエスト』に触れる前に、複雑なシステムに混乱しないようパラメータ要素を差し引いた、このAVG『ポートピア連続殺人事件』で慣れさせておく意図があったといわれています。

ファミコン版チラシから感じるもの

当時 店頭で配布されていたチラシです。
※ここで紹介しているチラシはオリジナルではなく、コピーしたものを掲載しています。

チラシ:おもて面

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  • おもて面は説明書に記載されている、物語の導入部をそのまま引用したり、ゲーム画面をいっさい使わず、物語自体のイメージを表現することに専念している仕上がりです。
  • いまでも語られる印象的なパッケージイラストを紙面の大半に割り当てた、製品をイメージしやすい構成となっています。
  • 「この『ポートピア連続殺人事件』は、フィクションであり、登場する個人名、団体名は実在のものと いっさい関係ありません。」との表記があります。神戸、淡路島、京都などが登場することから、「登場する”地名”はフィクション」とは書かれていません。

チラシ:うら面

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  • ファミコンユーザーにとっては、AVGという未知なるジャンル。その紹介としてたくさんのシーンや人物、モードを掲載して、ゲームのイメージを伝えるメーカーの努力がうかがえます。
  • 紙面デザインとしては全体的に ごちゃごちゃ感が否めませんが、それも含めてファミっ子を煽る表現が多く見受けられます。紙面にちりばめられている実際のゲーム画面、そしてまるで攻略本のヒントのようなコメント、「真 は ん 人 は ダ れ だ !?」と、新聞の文字を切り抜いて作った怪文書のような表記など、物語の真相を知りたいと思わせる工夫が多く見受けられます。
  • 紙面の右下には『ドアドア』が掲載されていますが、当時はこのように直近に発売された製品を紹介することも多くありました。
  • 初めてのAVGというジャンルの予習用チラシとしての役割を感じます。またこのチラシで地下迷路の存在を明かさなかった点も大きな戦略であったと思います。

(おまけ知識)
ポートピアの表記は、Portpia? Portopia? Potopia?

「ポートピア」という単語の英語表記。
“Portpia”という表記を見かけますが、実際には神戸ポートピアランド等の舞台設定から考えると、理想郷を意味する”~トピア”の”topia”が使用されるため、Port”o”piaが正しいことがわかります。
またこのチラシ内ではPOTOPIAと謎の単語が描かれていますが、これは後に続く RENZOKU SATSUJIN … の表記から考えると、単に日本語を置き換えただけの表現になっています。
このように当時はベタな日本語を、英語風に表現した綴りが多かったのです。

“本格”と書いてあるけれど。

「本格サスペンス アドベンチャーゲーム」。
ゲームは花隈町(はなくまちょう)という場所から、サラ金会社社長の密室殺人事件を捜査するという形でスタートする。舞台が神戸とは明示されていないが、 花隈町をはじめ、その他も作品に登場する地名は実在する。堀井氏が兵庫県出身であり、慣れ親しんだ土地を題材に選んだのは、なかなかセンスがよい。
また、「密室」、「アリバイ」、「殺人事件」など、探究心を刺激するキーワードも多く登場し、当時のファミっ子の興味をそそる要素が多分に盛り込まれていた。
このように実在する地名を使い、そしてサスペンスの設定のみならず、ファミコン版にのみに設けられた地下迷宮や暗号解読など、日常生活では体験できないスパイのようなシチュエーションをも盛り込み、私たちファミっ子を楽しませてくれた。

犯人は言えないけれど。

世間では、本作をプレイしていなくとも、意外にも犯人を知っている人は多い。ゲームをクリアしたユーザーが犯人をバラし、だんだんと広まっていくのだろうが、さすがにこれは言いたくなる心境だ。
ゲーム開始直後、「犯人は誰か」という目的で物語を進めることになるが、クライマックスでは単に「犯人捜しゲーム」という観点で、この作品を片付けられないことに気づく。
この作品のシステムは、みる、しらべるなどの指示をだすのはボスであるプレイヤーで、部下のヤスがその行動を行う。グラフィックをはじめ、行動がボスの視 点で描か れているため、当然、画面にはボスという人物は登場しない。もちろんボスが自分から発言したり、プレイヤーの意思に反して勝手な行動をとったりはしない。 この作品では自分の体験が、すべてボスの体験となり、プレイヤーとの完全な一体化がなされている。
当初、このシステムについて、単に刑事ドラマのようにコンビを組んで捜査をする様子を表現したかったのだと安易に思っていたのだが、クライマックスではこ のカラクリを使った理由を知ることになり、なるほどとうなずく。そう、堀井氏は早くから、このシステムでしか成し得ない方法でAVGを表現していたのだ。
AVGはご存知のとおり、物語を進行させる目的以外に、他のジャンルほどすることがない。しかも、一度クリアしてしまえば、作品としての役割を終えてしまう。当然、創り手はユーザーの一度のプレイに勝負をかけてくる。『ポートピア』は、まさにそんな感じの印象だった。

完成度は100%ではないけれど。

この作品は、まだ半導体が高価な時代に発表されたこともあり、バッテリーバックアップのみならず、パスワードによるゲームの途中記録すらできなかっ た。つ まり、電源を切れば次回は初めからやり直しで、じっくりと継続的にプレイするこのジャンルのゲームでは致命的な仕様だった。
しかしその仕様ゆえ、次回以降、いかに要領よくゲームを進めていくかを考えるようになる。最終的にはいくつかのシーンを飛ばせることに気がつく。この方法 を利用すると物語の流れさえ知っていれば、30分にも満たない時間でクリアできる。通常、AVGといえばフラグを立てるため、順序よく情報を得ていく必要 がある。しかし、この作品は、フラグチェックされていないイベントやシーンがあり、プレイの仕方によっては前後の話がつながらない事態も起こる。このあた りの事情はゲーム性を左右することにつながるので、堀井氏のファミコン版AVGの次作である、『オホーツクへ消ゆ』への課題となったのではなかろうか。

この時代のことだけど。

AVGはパソコンでそれまで何度か触れたことはあったが、自己の所有物として、いつでも手元の置いておけるソフトとしては、『ポートピア』が初め てのゲームとなる。それだけに、かなり時間をかけて鑑賞できた。パソコン版を知らないために、素直で純粋な目でファミコン版を見られた、というのも、大き なポイントだったかもしれない。
当時のパソコンでは『ポートピア』に限らず、文字入力で「ミル ドア」といったように、キーボードから直接、行動を入力していた時代。これはパソコンAVG文化では一般的な手法であったが、ファミコンでは当然コント ローラ でプレイすることになるので、何らかの改良が必要だった。そこで、ファミコン向けに、コマンドをメニュー風に並べて選択させるように変更し、移植を達成 したのだ。パソコンからファミコンへ移植されると聞けば、スケールダウンするようなイメージがあるが、むしろこのシステムについては進化といえる。そう いった、発 想の転換やアイデアが随所に見られ、遊びの枠を超えて、よくできているな、と感心したものだった。

『ポートピア』が発売された 1985年頃といえば、まだ情報のネットワークが未熟で、なかなかゲームの様子を知ることができなかった。ときどき発売 される雑誌で画面写真を見てゲームの遊び方を予習して、発売日まで待つような時代だった。そんな環境のなか、ARKは『ポートピア』を発売日に購入したの で、AVGファンとして当時から熱かったのだと、あとから思い出す。

さて、AVGは、「一度クリアすると、ゲームの寿命が終わる」、「話 に 詰まると、何をしてよいかわからない」という2つのゲームシステムの欠点が、当時から指摘されていた。そして、これといった解決策が出ないまま、現在まで 時が流れてしまったが、もともとAVGとは、あまりゲームの仕組み的に融通が効くものではないので、昨今のAVG(っぽいもの)は、なんとかそこから脱す るようにと試みている。それはジャンルの融合や、キャラクターを第一主義とする方法でAVGを改良しようとしているが、AVG部分の割合が少なくなってし まい、結果としてAVGをプレイしている感じになれないものが多い。またビジュアルに容量を割けるようになり、AVGというシステムが圧倒的な量の映像に 飲まれている印象を受ける。

AVGのシステムの魅力と、それを昇華できる物語のバランスが、ちょうど取れていた時代の思想に戻らない限り、残念ながらAVGの発展はなさそうだ。

堀井氏にはまた是非とも、『ポートピア連続殺人事件』、『オホーツクに消ゆ』、『軽井沢誘拐案内』といった作品で発揮された感性で、現代版AVGを制作していただきたいと思う。

機種による違いも魅力だけど。

当時、NEC、SHARP、富士通などから性能や個性が異なるいくつかのパソコンが発売されていた。
『ポートピア』は、そのパソコンの各機種に向けてリリースされていたが、それぞれの機種において、物語の内容に影響のない範囲で、あるシーンの暗号解読方法を変えていたのが印象的だった。
それは、俊行の部屋のシーンであるが、「こめいちご」という暗号はファミコンだけのもので、パソコン版では物語の脈略や世界観とは無関係な、高度な暗号解読を必要とされる機種もあった。やっぱり”コメイチゴ”、”ミナトデカモメ”が印象的。

こ のファミコン版『ポートピア』は、当時 ファミコン雑誌で取り上げられていた「早解き」の紹介記事によると、最短57のステップでクリアできるということだ。本作のボリュームにしては少ないと感 じるが、それもそのはず、この『ポートピア』のフラグ立ては物語のつながりを無視した大ざっぱなもので、プレイの仕方次第では、俊行の逮捕もなく、地下迷 路にも最後に一度だけ入ればOKという有り様。通常の一般的なAVGであれば、地下迷宮の存在を知らせる伏線が物語のなかで語られたり、誰かの情報によっ てフラグが立つもの。これが天才堀井氏が巧妙に仕組んだギミックかは謎。

関連書籍のことだけど。

『ポートピア連続殺人事件 完全攻略本』

攻略本/徳間書店 330円

『ポートピア連続殺人事件』攻略本
登場人物を模した別のキャラクタが多数登場。当時の定番スタイル。

当 時の攻略本は、この表紙をご覧になってもお分かりのように、どれもマンガチックに描かれていました。ゲーム本編に登場するキャラクタとは異なり、別のイ ラストレータが描いたものを挿絵として使用していて、違和感がありました。おそらく当時は開発元からの画像提供とかそういった細かい取り決めがなかったの で、各出版社が独自の方法で攻略本を構成していたのだと思われます。
本書はプレイヤーであるボスの視点で進行し、解説がなされています。

『ポートピア連続殺人事件 密室殺人の謎』

ゲームブック/双葉文庫 420円

『ポートピア連続殺人事件』ゲームブックゲー ムから派生したこのような読み物の場合、オリジナルの物語と大きく異なる場合がありますが、これはファミコンに近い内容で描写されていて好感が持てま す。多少の新しい登場人物や、異なる展開があるものの、簡素なゲーム本編の内容を補完するような仕上がりに納得ができます。やはり原作に忠実に構成されて いるので、最後のシーンは袋とじになっています。
ゲームブックなので躍起になってプレイした当時のメモが挟まっていて、私のがんばりが伺えます。

リメイク作品のことだけど。

相当なアレンジが施されている携帯電話用アプリも各キャリア用に提供されているので、試してみてはいかが?

フィーチャーフォンタイプの携帯電話で作品がリメイクされています。思い切った豪華な手直しは意外にも好印象です。
各作品のリンクはスクウェア・エニックスのサイトに飛びます。リンク先のそっけない説明文は、当時のパソコンやファミコン時代を表しているかのようです。

各3作品について それぞれメーカー公式のヒントに関するページが用意されていますので、携帯電話版のゲームの様子がうかがえる内容となっています。資料としてリンクを掲載しておきます。

『ポートピア連続殺人事件』

© 2005-2008 ARMOR PROJECT / CHUNSOFT / SQUARE ENIX All Rights Reserved.

http://www.square-enix.co.jp/mobile/game/mysteries/portopia/

■スクウェア・エニックス サポートセンター
iモード版に関するQ&A
EZweb版に関するQ&A
Yahoo!ケータイ版に関するQ&A

※EzWeb版がいちばんヒントの内容が充実しています。

『オホーツクに消ゆ』

© 2005-2008 ARMOR PROJECT / ENTERBRAIN,INC. / SQUARE ENIX All Rights Reserved.

『軽井沢誘拐案内』

© 2005-2008 ARMOR PROJECT / SQUARE ENIX All Rights Reserved.

私はポートピアンだけど?

もう十分 作品を知っているのに、何度も遊びつくしているのに、何度も犯人を挙げているのに!!!‥‥にもかかわらず、やっぱり私は『ポートピア連続殺人事件』を捜査しています。

これはPC-8801版!!(1983年作品)の話です。
ゲームの進行はコマンド入力、メッセージはカタカナ、プログラムはBASICで組まれ、デジタル8色で”ペイント”‥‥という仕様は、まさに日本のAVG文化の初期の初期のスタイルです。
この88版をはじめ、他機種(PC-8001,6001,6601,X1,FM-7,MSX)版の『ポートピア』は、後にファミコン版のオリジナルとなる作品です。

システム面ではセーブ機能がないのはファミコン版でも同じですが、そもそもコマンド入力だったり、わかりやすい表現に直される以前の”過酷な”原型を知ることができたり、‥‥。88の愛好者としては随所でファミコン版と異なる部分に気持ちが高ぶります。

特筆すべき点は‥‥。
物語の進行過程で捜査を打ち切りにできるシーンがあります。
ここでゲームの終了と同時にプログラムが終了、処理はシステムに渡ってプロンプトが出ます。ある意味、現実に戻されてしまうマイナスな動作ですが、堀井氏からの「本当にすべてが終わりだよ」というシャレが効いたメッセージにも思えます。
このとき操作ができるので、BASICのリストを見ることができます。当時、BASIC文化にはオープンな考えがあって、プログラムを見ることができたことも魅力でした。

こ の作品は、当時のエニックスコンテスト作品が製品化されたものです。その際に多少は他の人の手による改訂があったものと思われますが、プログラムから堀井氏の息遣いのような活気を感じました。このBASICのコマンドを堀井氏がモニタの前で、私と同じ環境で組んでいたのかと思うと不思議な気持ちです。

ゲームプレイ以外にも楽しみが増えました。
この貴重な『ポートピア』のBASICのプログラムを拝見し、堀井氏のAVGにかける想いを読み解いてみたいと思います。