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PSoneと『クロス探偵物語』のショット

※これは投稿から数年が経過している古い記事です。当時の様子を残すためにそのまま掲載しています。

特集『クロス探偵物語』

※これは投稿から数年が経過している古い記事です。当時の様子を残すためにそのまま掲載しています。

いつもご覧いただきありがとうございます。
今後 本作品に関わる攻略や研究結果を公開できたらなと考えています。

(上)プレイステーション版 (下)サターン版
(上)プレイステーション版
(下)サターン版

オムニバス形式で構成されているのが特徴的なAVG。各登場人物の性格がきちんと設定されており、会話のやりとりがおもしろい。クリア予想時間も説明書に記されており、短編ドラマに参加するような感覚でプレイできる。
本作品は、’98年6月にサターン版、’99年10月にPS版が2枚組で発売された。
本作品はオリジナルのサターン版を経て、PS版で一度発売されたものを更に前後編2つに分けた再販版で各1,500円。安いが内容はかなり充実している。
ちなみに、サターン版との大きな違いは、文字のみだった主人公のセリフがPS版では音声に。そしてサターン版には「もつれた7つのラビリンス」とサブタイトルがついていた。
※本稿は主にプレイステーションの廉価版を中心に書かせていただいています。

作品概要

特筆すべき点は、データの読み込みスピード。このジャンルの作品というのは「移動」コマンドなどにより、グラフィックを描き換えることが頻繁に行われる。そこで”マッハシーク”と謳われたエンジンでグラフィック等を読み込む時間を大幅に短縮している。ただグラフィックデータを軽くする関係上、画面を粗くし、アニメも部分的な箇所だけが動くという、少々古い手法をとる結果となっているが、ゲームシステムの弱点を解消したことの価値は大きい。
この作品の構成を分析してみると、プレイヤーが主人公となり、手を動かし、調査を進めていく参加型シーンと、主人公がプレイヤーとは別の第三者となり、トリックや事の流れを説明してくれるシーンとに分かれていることに気がつく。つまりは、ある程度、プレイヤーが調査したあとに、主人公が集めた情報をまとめてくれるため、物語をわかりやすく、スムーズに進めることに成功している。ときどき、主人公が勝手に考え、プレイヤーの意思とは異なる行動を起こすことがあるが、これはこれで主人公のキャラを知れて楽しいつくりになっている。余談だが、主人公が発する言葉は軽く、直接的にものを言うシーンが物語の随所で見られ、いままでにないキャラ設定に心が動いた。
また通常、同ジャンルの他の作品であれば、物語のリアルさをだすためにゲーム内の時間の流れを実時間に近づけて描くことがほとんどであったが、この作品は違う。物語内の時間の流れがとにかく早く、テンポのよい展開をつくりだしている。

システム面と物語の両面から、快適なゲームがプレイできるようにと、配慮がなされている印象を受けた。また物語を進行させるためのフォローもしっかりされており、推理をする楽しさを与えてくれ、最後まで作品を体験して欲しいという制作者の心づかいをも感じた。

物語は、オムニバス形式ということで、それぞれの話は完結している。しかし、オープニングから語られている主人公-黒須の父親の死や、その他の人物との関係が消化されないままになっている部分もある。これらの伏線は、当時からアナウンスされている『クロス探偵物語2』へ持ち越される計画であったのだろうと推測できる。

PS廉価版-前編

PS版廉価版前編パッケージ
PS版廉価版前編パッケージ

オ ムニバスという方法を採用していながら、1本1本の話にボリュームがあり、推理AVGファンの心をつかむ絶妙な手法を用意してプレイヤーを楽しませてくれ る。クリア予想時間も説明書に記されており、短編ドラマに参加するような感覚でプレイできる。前編ではゲームの仕組みや世界観の様子を中心に丁寧に散りば めてあり、徐々に魅力が理解できるようなつくりになっており、物語が進むにつれ、よりAVGらしいリズムになる。

物語の見せ方も優秀で、進行を止めないような工夫がなされている。

PS版廉価版前編パッケージ(裏)
PS版廉価版前編パッケージ(裏)

聞 き込みや証拠品探しなどのように、手を動かし、プレイヤー自身が調査を進めていく参加型シーンと、主人公がそれまでの状況を一方的に整理し、物語を進める ための方針を示してくれるシーンとがあり、複雑になりがちなAVGの情報を最適な方法でまとめ、プレイヤーに推理させる楽しさを影で支えてくれる気配りが 嬉しい。また、グラフィックも怪しい箇所を調べたくなるような描き方がされていて、AVG心をくすぐる。
AVGというゲームシステムの制約の中であの手この手で、物語に参加させることを考えてあり、やはりこれはAVGというスタイルでのみ体験できることだと感じた。

このタイプのゲームは「犯人探し」という目的だけに関心が向かいがちだが、主人公が探偵になった経緯から、物語を通して成長していく様子が描かれているため、「犯人は誰か」という点以外でも鑑賞すべき箇所が多い。

物語も優秀だが、CD-ROMのアクセスを極力減らす努力がなされており、様々な箇所で親切な設計がなされている作品。
【資料】
■オープニングは、ピチカート・ファイヴの『大都会交響楽』を使用。
■PS廉価版の前編での主な追加事項(PSのオリジナルからの変更点)
・前編のエンディング
・後編の紹介映像

PS廉価版-後編

PS版廉価版後編パッケージ
PS版廉価版後編パッケージ

後編では、様々なトリックが登場し、また殺人現場が豪快に描かれていたりと、盛り上がりを見せる。前編からの伏線がつながり、物語の後半としてうまくまとめられている。

後 編の特色としては、閉鎖された空間で事件が起こり、行動が限定されているシーンが多い。犯人が自分たちと同じ空間にいるかもしれないということを人物の不 安な表情を使ってうまく表している。またこの作品は登場人物の性格付けが丁寧に設定されていて、ひとりひとりが目的を持って、意味のある存在で登場してい ることに気づく。前編に登場した人物が再度、後編に登場したときに、親しみを感じることができたのは、こういった部分がしっかり設定されているからだろ う。
残酷な殺人事件が起こる状況下で、顔見知りの人間に会えるということはゲームとはいえ、心強い。

PS版廉価版後編パッケージ(裏)
PS版廉価版後編パッケージ(裏)

前後編をとおして、共通して気になる箇所を2点をあえて挙げれば、次のようになる。
ひとつめは、物語の進行(フラグ立て)とは関係のない人物に話しかけるとそっけない返事が返ってくること。AVGのカラクリからすると、これもひとつのヒントを与える方法で「物語の進行には無関係な人物」と判断できるが、もう少しメッセージの工夫がほしかった。
またもう1点は、高速な読み込みスピードの実現のために、画像をやや粗くしている点。それ自体は圧縮率を上げ、読み込みスピードが向上するという利点があ るが、結果として、グラフィックが粗く見え、古臭い印象を受けてしまうことがしばしばあった。しかし、「画像が粗い」とは言うものの、決して「汚い」とい う意味ではなく、グラフィッカーの個性とも解釈できる。
予断であるが、例えば、部屋の壁を見ても、シミなどで汚れておらず、非常にきれいに描かれていたり、殺風景な場面を見ると特にそんな圧縮率を高めるような努力が伺えた。

続編がアナウンスされて、ずいぶんと経つが、このままのスタイルで制作されれば、かなり良いものが完成するハズ。
クロスと神宮寺‥‥。
個性を二分化しながら、末永くがんばっていってもらいたいものです。*1)
*1) 下の「mini MEMO」というコーナーで説明しています。
【資料】
■PS廉価版の後編での主な追加事項(PSのオリジナルからの変更点)
・前編のダイジェストムービー
・「クロス探偵物語2」の予告映像
■後編には、セーブデータを利用したおまけ特典がある。(説明書に記載)

PS廉価版-収録タイトル一覧

■前編に収録 ★後編に収録

タイトル 平均終了時間
■第一話 名探偵誕生 約2時間
■第二話 疑惑 約5時間
■第三話 ゆがんだ名門校 約7時間
■第四話 依頼者 約1時間
★第五話 紺碧の記憶 約8時間
★第六話 満月の夜に 約3時間
★第七話 タランチュラ 約10時間

クリアにかかる所要時間を示した「平均終了時間」が一応 説明書には示されているが、これは実時間ではなく、あくまでも物語のサイズ(規模)と捉えた方がよい。
推理AVGのツボをついたタイトルは、その名に恥じぬよう、十分な奥の深いドラマを用意してくれている。
すべての物語は個性があり甲乙をつけがたいが、個人的にはAVGの仕組みをよく研究されている『ゆがんだ名門校』、『タランチュラ』がオススメ。

『クロス探偵物語』は、AVGの代表格として、十分に説得力のある作品です。未プレイの方は、ぜひ、手にとって遊んでみてください。きっと、いままでのAVGとは、ひと味もふた味も違う風味を味わうことができるはずです。

関連CD

ピチカート・ファイヴ
『大都会交響楽』

PIZZICATO_FIVE[single]『クロス探偵物語』は主題歌にピチカート・ファイヴの『大都会交響楽』を使用。
このシングルCDは直接の『クロス探偵物語』の関連製品としては扱われていないため、CDのパッケージにもその記載はない。ピチカート・ファイヴの楽曲提 供、というイメージが強い。なお、『PIZZICATO FIVE JPN』というアルバムにも、同「大都会交響楽」が収録されているが、ボイスとかぶってしまっているため、ゲームと同じ状態で聴くには、やはりこのシング ルCDの方がオススメ。『クロス探偵物語』自体のサントラはリリースされていないので貴重!!

収録曲

1.大都会交響楽
2.コンチェルト
3.大都会交響楽
4.コンチェルト
※3,4は、インストルメンタル

セガサターンヒストリー VOCAL コレクション
『セガサターン発売10周年記念盤』

先に紹介した、クロスの主題歌『大都会交響楽』がこのアルバムに収録されているので、当時、購入できなかった方は いかがですか。

アルバム紹介

セガサターンヒストリーシリーズ、セガサターン発売10周年記念限定盤をリリース。ファン投票やリクエストで、選ばれたヴォーカルコレクション。他に、サウンドノベルの『街』や『セガサターン、シロ!』などのボーカル曲が収録されている。

関連書籍

以下のいずれも、オリジナルであるサターン版、同オリジナル プレイステーション版向けの関連書籍となります。

クロス探偵物語~もつれた7つのラビリンス~ 公式ガイドブック

サターン版◇1,000円◇NTT出版◇’98.6発売

攻略本(サターン版)
攻略本(サターン版)

攻 略ページでは、推理のポイントが記されているのみで、AVGというジャンルへの配慮がなされています。一方、後半の完全解決編では、最短ルートや詳細な見 取り図が示されているので、より深く本作品の世界を知るのに役立ちます。巻末には、数ページですが、開発陣のインタビューつき。
後半は白黒ページ。

収録内容

◆登場人物編◆探偵入門編◆全話攻略◆完全解決編◆開発スタッフが語る「クロス」

クロス探偵物語 公式ガイド

プレイステーション版◇1,200円◇ソフトバンク パブリッシング◇’99.10発売

攻略本(プレイステーション版)
攻略本(プレイステーション版)

後発だけあって、人物相関図、登場人物名鑑、物語のダイジェスト、犯行現場の間取り、ゲームの中の名珍場面集、開発陣インタビューなど、多彩な企画が盛り込まれていると感じます。
調査報告(攻略)ページには、攻略記事とコマンドの最短ルートが同じ場所に掲載されているので、NTT出版のサターン版のような配慮が必要だったのではないでしょか。
巻末には「週刊 ザ・プレイステーション」に掲載されたサイドストーリーがあり、ファンには嬉しい特典。全ページがカラー仕上げ。

収録内容

◆システム◆登場人物紹介◆全話攻略◆調査報告◆事件関係資料◆インタビュー&設定資料◆週刊ザ・プレイステーション記事再収録◆エンディング

クロス’Sメモ

この『クロス探偵物語』は、いくつかの不運がありました。

発売前の仕様変更

サターン版パッケージ
サターン版パッケージ

初作品サターン版では、いちど発売延期がありました。
それはメーカーの「徹底的に作品をつくり込みたかった」という理由と、もうひとつ。2枚組の作品の1枚目をプレイした分岐結果で、4種類ある2枚目の内容 が決定され、それをメーカーが直接ユーザーに郵送する、”I-VACS”という方法が原因していました。つまりは購入時は1枚しか手元にないということで す。
プレイヤーに合わせた最適な物語がプレイヤー次第で決定されるという方法でしたが、すべてを体験したい、家族などの複数でプレイする場合などに支障を来すものとなったため、発売前に考え直した、というわけです。
このあたりの事情の説明は、ゲーム雑誌『ファミ通』で告知文が掲載されていました。

サターン版パッケージ(裏)
サターン版パッケージ(裏)

最 終的には4種類をすべてを2枚のメディアの中に入れることに成功し、発売されたという経緯があります。これがどのように改善されているのか、というところ に感心をもちました。これはプレイするとわかりますが、説明書やご自身で確認してみてください。「4種類」がキーワードです。

開発元は無名のメーカー

ARK自身はメーカーにかかわらず、優秀と思える作品はなんでも手にとってしまうのですが、『クロス探偵物語』はなかなか目にする機会がありませんでした。
当時、サターン版の『クロス探偵物語』の発売告知を見たときは、「デジタル・トウキョー」というゲームファンにはまったくの無名の会社でした。(後にコンシューマ事業が分化して、1998年ワークジャムの設立となりました。)
この作品は雑誌の露出度も低く、なかなかゲームの魅力や正体をつかむことが困難でした。シリーズモノではなく、しかも会社名もなじみがない、ゲームタイト ルも初めて目にする‥‥そんなイメージだけで、本作品を見ていました。周囲の評価に振り回されず、面白いソフトは自力で発見し、自分自身で評価をしたいと いうスタンスで眺めても、購入には至りませんでした。時を経て、2000年9月28日、この作品の廉価版の発売日にようやく購入することになりました。

サターン版には、AVGファンをそそる仕組みも

オリジナル作品のサターン版には、後発の作品にはないモードがありました。
通常、AVGといえば行動をとるときにコマンドを選択するが、サターン版では、そのコマンド選択の回数がゲーム中、内部でカウントされている。ゲームの進行にはまったく関係がないが、クリア後に何ステップでクリアしたかが、わかる仕組みになっている。これを利用して、「最少コマンドリーグ」 というキャンペーンが行われ、いちばん少ないステップ数でクリアしたユーザーには、イタリア旅行などが抽選でプレゼントされた。現在、この企画はでは終了 しているが、AVGファンであれば、最短ルートを探す指針として重宝するのでは?(しかし、昨今の丁寧すぎる攻略本では、すべてルートが記されているので した。)サターン版もPS版とあわせて、鑑賞してみては?

サターン版とプレイステーション版、それぞれの良さ

プレイステーション版パッケージ
プレイステーション版パッケージ

グ ラフィックの発色やシーンの切り替わりなどはサターン版が優れており、一方、プレイステーション版は主人公のボイス追加など、より完成された印象を受けま す。このあたりの話は、グラフィック担当の玉置一平さんのサイトで軽く触れられていますので、興味がある方は、覗いてみてください。単なるグラフィックの 提供というだけではなく、『クロス探偵物語』には、細かい映像の作業にも参加したことが確認できます。

会社から会社へ‥‥版権の移管

プレイステーション版パッケージ(裏)
プレイステーション版パッケージ(裏)

デー タイーストは2003年、残念ながら倒産し、同社の名作AVG「神宮寺三郎シリーズ」の版権が、『クロス探偵物語』のワークジャムに移りました。また、神 宮寺の『未完のルポ』、『夢の終わりに』、『灯火が消えぬ間に』のプロデューサーである西山氏もワークジャムに移り、第8作目『Innocent Black』や第9作目『KIND OF BLUE』を手がけ、活躍されています。ある意味、AVG制作の実績があるワークジャムに神宮寺シリーズの版権が渡り、ファンとしては安心しています。
これからのご発展をお祈りしています。